カンピロバクターの死滅条件 カンピロバクター食中毒の原因と予防
カンピロバクターの死滅条件 カンピロバクター食中毒の原因と予防
カンピロバクター(Campylobacter)属は、家畜、家禽、ペット、野生動物、野鳥等の動物の腸内に分布しています。

また、カンピロバクター食中毒は、鶏や牛に保菌率が高いカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)と、豚に保菌率が高いカンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)が主な原因となっています。

今回は、カンピロバクターの死滅および育成条件とカンピロバクターによる食中毒について解説いたします。

カンピロバクター

出典:東京都健康安全研究センター

カンピロバクター食中毒の特徴

一般名:カンピロバクター・ジェジュニ/コリ
菌種名:Campylobacteraceae, Campylobacter jejuni/coli
染色性:グラム陰性
酸素要求性:微好気性
形 状:らせん状桿菌
芽胞形成:形成しない

カンピロバクターは、鳥類、牛、豚、羊等の動物の腸管内に生息しています。

微好気性菌で、温度域は30~45℃、酸素濃度は5~15%で増殖します。

大気中(酸素濃度約 21%)や、酸素が全くない環境、pH4.8以下の酸性やpH9.1以上のアルカリ域では増殖できません。
また、大気中や乾燥状態では徐々に菌数は減りますが、低温では常温よりも生き残りやすく、冷蔵庫温度の1~10℃で生存期間が延長しますので注意が必要です。

カンピロバクター属には24の菌種及び亜種が含まれていますが、さらに11の新たな菌種が提案されています。

カンピロバクターによるヒトの下痢症から分離される菌種はカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni )が 95~99%を占め、その他カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli )なども下痢症に関与しています。

カンピロバクターに汚染された食品や水道水・井戸水から直接、または、汚染された調理器具等からの二次汚染を介して、カンピロバクターを摂取することによってヒトが感染することがあります。
数100個程度の少ない菌量の摂取で感染することが知られています。

カンピロバクターの死滅条件

phosphate buffer
\(D_{50} = 1.0~6.3 min\)(6D:37.8分 , 7D:44.1分)
\(D_{55} = 0.6~2.3 min\)(6D:13.8分 , 7D:16.1分)
\(D_{60} = 0.2~0.3 min\)(6D:1.8分 , 7D:2.1分)

skimmed milk
\(D_{48} = 7.2~12.8 min\)(6D:76.8分 , 7D:89.6分)
\(D_{55} = 0.74~1.0 min\)(6D:6.0分 , 7D:7.0分)

poultry meat
\(D_{49} = 20.0 min\)(6D:120.0分 , 7D:140.0分)
\(D_{57} = 0.75 min\)(6D:4.5分 , 7D:5.3分)

(anses.2011)

※D値は、菌株量、pH、脂肪量、水分活性その他の要素で異なります
※D値は生菌数を1/10に減らすために必要な時間です
※6D:6D reduction、7D:7D reduction

カンピロバクターの発育条件

発育条件 発育至適条件
温度域 pH域 水分活性 温度域 pH域 水分活性
カンピロバクター・ジェジュニ/コリ 30~45℃ 4.9~9.0 0.987 41.5℃ 6.5~7.5 0.997

(anses.2011)

大気中の酸素濃度や30℃以下では増殖できないため、食品保管中にはほとんど増殖しません。
水中で数週間生存(4℃の冷水で数週間、25℃の温水では数日)します。

※pH:1~14まであり、pH7が中性、7未満が酸性、7を超えるとアルカリ性となります。
※水分活性:食品の水分は%で表さないで、食品中で微生物が生育するために利用できる水分割合を示す水分活性Aw(Water activity)として表示されます。

カンピロバクター食中毒の潜伏期間

潜伏期間は2~7日間(平均2~3日)となります。

カンピロバクター食中毒の汚染経路

カンピロバクターによる食中毒は、食品を摂食してから発症するまでの潜伏期間が2~7日と長く、原因食品の特定が困難な事例も多いですが、原因が判明したものの多くは鶏料理で、特に鶏の刺身やタタキ、鶏レバーなど生や加熱が不十分な状態で摂食する料理が多数を占めます。

また、汚染された食肉等と接触した野菜や、調理器具や手指を介した二次汚染による事例もあります。

鶏肉に次いで、バーべキューや焼き肉による事例も多く、牛レバー刺しによる事例も報告されています。

その他、諸外国では消毒不十分な飲料水、未殺菌の生乳や生乳から作られるチーズが原因となった事例が多数発生しています

加熱の不十分な食肉(特に鶏肉)、飲料水、サラダなど
未殺菌の生乳や生乳から作られるチーズなど

カンピロバクター食中毒の発症菌数

推定発症菌量は\(10^2\)CFU/g程度と少量で発症します。

※CFU/g:CFU(Colony Forming Unit)は菌量の単位で、1g中の菌の個数を表します。

カンピロバクター食中毒の主な症状

カンピロバクターによる食中毒は、下痢、腹痛、発熱、頭痛、嘔吐など他の食中毒症状と似ています。

下痢は1日に数回から10回以上の激しい場合も見られます。発熱はおおむね37℃から38℃台ですが、40℃を超える場合もあります。

腸炎の諸症状の他、敗血症、関節炎、まれに髄膜炎、ギラン・バレー症候群(Guillian-Barre Syndrome)やミラー・フィッシャー症候群(Miller-Fisher Syndrome)などを発症する場合があります。

※Guillian-Barre Syndrome:手足の筋力が低下し、症状が進行すると完全四肢麻痺や呼吸麻痺に至ることもある。症状が数週間持続した後、徐々に回復に向かうのが一般的である。カンピロバクター感染が同症候群を誘発する要因の一つとして考えられているが、その機序等は未解明。
※Miller-Fisher Syndrome:急性の外眼筋麻痺・運動失調・腱反射消失を三徴とする。近年はフィッシャー症候群と呼ばれることが多い。

カンピロバクター食中毒の予防

食品の中では、主に鶏肉や牛肉・肝臓が、カンピロバクターにより汚染されています。

食中毒を予防するためには、鶏肉や食肉の生産段階から処理加工、消費までのすべての段階において、これら食品と他の食品との交差汚染を防ぐことが重要です。

カンピロバクター食中毒の予防には以下が有効とされます

カンピロバクター食中毒の予防

  1. 十分な加熱(中心部を 75℃以上で1分間以上)を行う
  2. 手指や調理器具は、十分に洗浄・消毒し、よく乾燥させる
  3. 保存時や調理時に、肉と他の食材(野菜、果物等)との接触を防ぐ
  4. 未殺菌の飲料水、野生動物などにより汚染された環境水を摂取しない

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(参考文献)

NIID 国立感染症研究所 カンピロバクター感染症とは
IDSC 国立感染症研究所 感染症情報センター LASR
MAFF 農林水産省 リスクプロファイルシート カンピロバクター
FSC 食品安全委員会 ファクトシート カンピロバクター(Campylobacter)
東京都福祉保健局 カンピロバクター・ジェジュニ/コリ
MHLW 厚生労働省
JFHA 公益社団法人日本食品衛生協会
JFIA 一般財団法人食品産業センター 危害要因管理

World Health Organization(WHO)
Food and Drug Administration(FDA-United States)
European Food Safety Authority(EFSA-European Union)
Ministry for Primary Industries(MPI-New Zealand)
Data sheet on foodborne biological hazards(anses-France)
U.S. DEPARTMENT OF AGRICULTURE(USDA-United States)
Centers for Disease Control and Prevention(CDC-United States)
European Centre for Disease Prevention and Control(ECDC-European Union)
National Center for Biotechnology Information(NCBI-U.S. National Library of Medicine)
The International Commission on Microbiological Specifications for Foods (ICMSF-the Commission)
Public Health England(PHE-England)

Lemgo D- and z-value Database for Food(OWL University of Applied Sciences and Arts)
World Health Organization Fact sheets Campylobacter(WHO.2018)
Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food:Draft Guidance for Industry(FDA.2016)
European Food Safety Authority(EFSA Search.Campylobacter)
Analysis of the baseline survey on the prevalence of Campylobacter in broiler batches and of Campylobacter and Salmonella on broiler carcasses in the EU, 2008 - Part A: Campylobacter and Salmonella prevalence estimates(EFSA Journal 2010; 8(03):1503)
Scientific Opinion on Campylobacter in broiler meat production: control options and performance objectives and/or targets at different stages of the food chain(EFSA Journal 2011; 9(4):2105)
Risk profile: Campylobacter jejuni/coli in poultry (whole and pieces) (MPI Technical Paper No: 2015/02)
Risk Profile: Campylobacter jejuni coli in mammalian and poultry offals(NZFS-ESR.2007)
Risk profile: Campylobacter jejuni/coli in raw milk(MPI Technical Paper No: 2014/15)
Risk Profile: Campylobacter jejuni coli in red meat(NZFS-ESR.2007)
Data sheet on foodborne biological hazards :Campylobacter jejuni, Campylobacter coli(anses.2011)
USDA Search.Campylobacter(USDA)
Centers for Disease Control and Prevention.Campylobacter (Campylobacteriosis)(CDC-United States)
The Bacterial Diversity Metadatabase:Campylobacter

 

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