食品製造工場で必要な蒸気配管工事の基礎について 間違えた配管は装置の寿命を縮める

食品加工機械には電源を接続するだけで動作する機械もありますが、多くは蒸気、水およびエアー源などを必要としますが、今回は蒸気ついて考えてみたいと思います。

蒸気を必要とする身近な食品機械とてはスチーマー、ボイル機器関連などがあります。ボイラーから蒸気を必要とする装置までは、どの様にして蒸気を移送するか? ご想像の通り工場内外に配管を通して蒸気を運ぶのが一般的です。ただし、蒸気を移送するにはいろいろな工夫が必要となります。これを怠った配管工事を行うと、装置に蒸気が到達した時点で温度が下がってしまっていたり、圧力が低下してしまっていたりと役に立たない蒸気になってしまいます。また、蒸気は高温のため間違った使い方をすると重大な事故にもつながります。

工場で蒸気を使用するための蒸気配管工事には、さまざまな工夫と専門技術が必要です。

スチームトラップで配管にたまるドレンを排出

良質の蒸気を使用するためには、配管中に発生するドレンを速やかに取り除いた状態で目的の装置へ供給する必要があります。ドレンの混ざった蒸気を使用すると、機械本来の性能が発揮できなかったり、寿命が縮んでしまう事も十分に考えられます。このドレンを配管から排出するため、配管の途中にスチームトラップを設置します。

スチームトラップとは、蒸気雰囲気の中からドレンだけを排出して、蒸気を極力漏らさないという機能があります。ドレンのみを排出する自動弁の一種です。

スチームトラップが正常機能しなくなると発生するさまざまな問題

・さまざまな場所にドレンたまり、装置が正常機能しなくなります。
・ドレンが蒸気の早い流れに引っ張られて高速で配管や装置に激突し、騒音が発生したり装置の破損につながる場合もある。
・ドレンが熱交換器等の内部に溜まると熱交換効率が低下し本来の能力が発揮できなくなります。
・装置を含めた配管経路内の腐食などで、思わぬトラブルの原因となります。

減圧弁で使用圧力まで減圧

減圧弁とは、高い圧力で送られてきた蒸気を設定した圧力まで下げることが出来る装置です。装置によって必要とする蒸気量と圧力は異なりますので、基本的には各装置に減圧弁が必要です。

自動的に弁開度を変化させて圧力を一定に保つ制御は、汎用の制御弁でも圧力センサー、調節計を合わせて使用することによりもちろん可能ですが、減圧弁は動力等を使うことなく、自力で純機械的に圧力制御を行える点が優れています。また、減圧弁内部で機械的に圧力を検知して作動するため、動きが非常に俊敏であることも特長です。

装置手前の減圧弁で適正な圧力に減圧されている事を確認しておく必要があります。

ストレーナーで配管中の異物を除去

配管中に発生するスケールや異物を取り除く役目をします。配管の途中に設置してストレーナー以降へは不純物のない蒸気を送ります。そうする事によって、スチームトラップや減圧弁などを保護することができます。仮にストレーナー無しで配管を行ってもしばらくの間は問題なく使用できますが、次第に減圧弁などに異物が詰まるなどで正常に機能しなくなってしまいます。

保温、板金工事(ラッキング)の重要性

蒸気配管や冷媒配管では、流体の熱損失を防ぐため、配管に保温工事を施す必要があります。一般的にはグラスウールやロックウールなどの保温材で配管などを巻くというものです。

保温工事を終えると、次に保温材をカバーするための板金工事(ラッキング)を実施します。
保温材は水分に弱いため、雨などに触れるとたちまち劣化してしまいます。
それを防ぐために、板金工事(ラッキング)が必須となります。

まとめ

どの様な配管工事でもそうですが、特に蒸気配管については間違った方法で進めてしまうと装置の寿命を縮めてしまいます。外観では見えない部分をどんどん腐食させていった結果、原因不明のトラブルが発生して思わぬ損害につながります。また、蒸気は高温、高圧で配管内を移動していますので施工に不備があると大変危険ですので十分な注意が必要です。

また、特に蒸気配管は単純に配管を接続して目的の機械まで送っても正常に機能しません。先にお話ししたスチームトラップや減圧弁なども取り付ける位置を誤ってしまうと役に立ちません。この様に蒸気配管には高い専門技術を必要としますので、おそらく皆さんが思っている以上にコストがかかります。工場立上げ、および新設備導入時には十分に考慮しておく必要があります。

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