HACCP導入に伴う一般的食品衛生管理プログラム(PP,PRP)の重要性について

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2018年6月13日、15年ぶりとなる改正食品衛生法が公布されました。

この新食品衛生法では、「国際的な衛生管理手法であるHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の制度化」が盛り込まれ、全ての食品事業者を対象としています。

原則すべての事業者に「HACCPの考え方に基づく衛生管理(コーデックスのHACCP7原則に基づく衛生管理)」が義務化されますが、飲食業など一定の事業者については、その取り扱う食品の特性等に応じた「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」で良いとされています。

施行は公布の日から2年以内とされていますので、2020年6月13日までに施行され、施行日から1年が経過措置期間の予定となっています。

当初、HACCPの義務化は2020年東京オリンピック開催を見据えてとされていましたが、経過措置期間を考えると微妙なスケジュールになった気がしますね。

今回は、HACCPを取り入れる前に必要な「前提条件プログラム=一般的衛生管理プログラム(PRP)」について説明したいと思います。

一般的衛生管理プログラム(PRP)とは

HACCPシステムには、「一般的衛生管理プログラム」というHACCPを取り入れる前に必要なプログラムがあります。

一般的衛生管理プログラム(Prerequisite programme :PP又はPRP)

※HACCPの前提条件プログラムとも云う

一般的衛生管理プログラム(PRP)とは施設・設備の保守管理や、食品の衛生的な取扱い、従業員の衛生管理・教育、調理器具の洗浄・殺菌等、食品製造の工程には含まれないものの、食品を製造する環境の衛生を保つために必要なプログラムであり、HACCPを導入する際の第1ステップは、すべてのPRPの項目が遵守されていることが条件となります。

これができていなければ、HACCPシステムを取り入れても、施設や器具からの汚染や異物混入などの危害要因が増え、集中した管理が難しくなり、食品を衛生的に取り扱うことが困難になります。
一般的衛生管理プログラム(PRP)は、HACCPシステムの土台のような役割なので、まずはこのプログラムを確実に管理・実施していくことが必要なのです。

一般的衛生管理プログラム(PRP)の概要

HACCPの認証取得に際しては、一般的衛生管理プログラム(PRP)の項目、内容についての定めはなく、認証を与えている団体によって項目は異なります。
実際は、施設及び製造する食品により異なりますので、自社施設および製造食品を最適に衛生管理できるよう定める必要がありますが、既に5Sまたは7S運動が定着している場合は、そこから発展させることも出来るかと思います。

具体的には、各自治体の条例による「施設基準」や「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針」およびコーデックス委員会より示されている「食品衛生の一般的原則」や総合衛生管理製造過程実施要領の「衛生管理の方法」なども参考になります。

日本国内には、総合衛生管理製造過程によるHACCP認証、地方自治体によるHACCP認証、民間審査機関によるHACCP認証、業界団体によるHACCP認証などがありますが、例えば、総合衛生管理製造過程の承認制度では、以下の10項目について「作業内容、作業頻度、実施担当者並びに実施状況の確認及び記録の方法を定めていること」が求められています。この中で日々取り組まねばならないのは①~⑧の要件です。

総合衛生管理製造過程における確認事項

① 施設および周辺の衛生管理
② 設備および機械器具の衛生管理
③ 従事者の衛生管理
④ 従事者の衛生教育訓練
⑤ そ族及び昆虫等の防除管理
⑥ 排水及び廃棄物の衛生管理
⑦ 使用水の衛生管理
⑧ 原材料及び製品の衛生管理

⑨ 事故発生時の対応管理(製品の自主回収プログラム)
⑩ 製品等の試験検査に用いる機械器具の保守点検

① 施設および周辺の衛生管理

施設設備の衛生状態を良好に維持・管理するために、施設内外の清掃や点検を行い、有害微生物の汚染防止および異物混入を防止する。

② 設備および機械器具の衛生管理

食品に直接触れる設備および機械器具類は常に衛生的に保持できるよう殺菌消毒するとともに、破損による異物混入防止など、常に良好な状態で使用できるよう点検する。

③ 従事者の衛生管理

定期的な健康診断の受診及び毎日の健康状態を把握と適切な手洗いにより従事者からの有害微生物汚染を防止する。また着衣・毛髪などからの異物混入を防止する。

④ 従事者の衛生教育訓練

全従事者を対象とした定例勉強会、パート・アルバイトを含めた新規採用者研修などを行うことにより、すべての従業者に食品を衛生的に取扱うための知識及び技術を習得させる。

⑤ そ族及び昆虫等の防除管理

そ族昆虫等を原因とする有害微生物の汚染防止および異物混入を防止するために、生息状態を調査点検し、発生した際にはそれらの駆除を迅速に実施する。

⑥ 排水及び廃棄物の衛生管理

排水のつまり。また、生ゴミ・集積場の衛生管理等、廃棄物による有害微生物の汚染および増殖を防止する。

⑦ 使用水の衛生管理

排水のつまり。また、生ゴミ・集積場の衛生管理等、廃棄物による有害微生物の汚染および増殖を防止する。

⑧ 原材料及び製品の衛生管理

原材料の納入業者の衛生管理から始まり、入荷検収・製造・保管まで、食品を常に衛生的に管理する。

⑨ 事故発生時の対応管理(製品の自主回収プログラム)

不良な製品を万が一出荷してしまった際、速やかに事故等の原因を究明、健康被害等の拡大を防止し、迅速に回収するための手順を定める。

⑩ 製品等の試験検査に用いる機械器具の保守点検

試験検査の信頼性の保証を行うため、点検を行って適切に管理する。

まとめ

現在、日本の食品工場では、手順が明確化されていなくとも、一般的衛生管理プログラム(PRP)に近いものは実践しているという工場は多いのではないでしょうか。
その手順をルールとして明確に定め、実行、検証することでPRPの大部分は容易にできてしまいます。
あとは、PDCA(Plan→Do→Check→Act)サイクルでいうCheck(点検)に重点を置き、複数の実施者と確認者により異なった視点で状況をCheckすることにより、問題点(すなわち改善すべき部分)を抽出できます。

このように、PDCAサイクルをどんどんまわすことで、より良い作業標準に改善され、工場全体の衛生管理が向上していくことになるのです。

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