黄色ブドウ球菌の死滅条件 ブドウ球菌食中毒の原因と予防
黄色ブドウ球菌の死滅条件 ブドウ球菌食中毒の原因と予防
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、人や動物の皮膚などに常駐していますが、傷などの化膿巣に多くみられます。
食品中で増殖すると、エンテロトキシンと呼称される毒素を産生し、ブドウ球菌食中毒の原因となります。
菌自体は熱に弱いですが、この毒素は100℃で20分加熱しても分解されません。

今回は、毒素型食中毒の代表であるブドウ球菌食中毒について解説いたします。

黄色ブドウ球菌

出典:東京都福祉保健局

黄色ブドウ球菌食中毒の特徴

一般名:黄色ブドウ球菌
菌種名:Staphylococcus aureus
染色性:グラム陽性
酸素要求性:通性嫌気性
形 状:球菌
芽胞形成:形成しない

黄色ブドウ球菌は、健康な人でも鼻や髪の毛、皮膚などに常在しています。

化膿菌の一つであり、手指の化膿創やニキビなどの化膿巣には多量に存在しているため、食品取扱者を介した食品汚染の大きな原因となっています。

また、黄色ブドウ球菌は、エンテロトキシンという耐熱性の高い毒素を産生し、100℃で加熱調理をしても菌は死にますが毒素は残ります。

さらに、冷凍下でも安定しています。酸に対しても抵抗性が強く消化管内でもほとんど分解されません。

黄色ブドウ球菌の死滅条件

\(D_{50} = 127.9 min\)(6D:767.4分 , 7D:895.3分)
\(D_{55} = 21.7 min\)(6D:130.2分 , 7D:151.9分)
\(D_{60} = 6.5 min\)(6D:39.0分 , 7D:45.5分)
\(Z = 7.7 ^\circ C\)

(J Appl Microbiol.2005)

※D値は、菌株量、pH、脂肪量、水分活性その他の要素で異なります
※D値は生菌数を1/10に減らすために必要な時間です
※Z値は加熱時間D値を1/10 する為に必要な温度です
※6D:6D reduction、7D:7D reduction

黄色ブドウ球菌の発育条件

発育条件 発育至適条件
温度域 pH域 水分活性 温度域 pH域 水分活性
黄色ブドウ球菌 7~50℃ 4.0~10.0 0.83< 35~40℃ 6~7 0.98

塩分濃度20%でも増殖可能とされる

発育条件(FDA)、発育至適条件(農林水産省)

耐熱性の毒素(黄色ブドウ球菌エンテロトキシン)の産生条件は
・温度域:10~48℃
・pH域:4~9.8
・水分活性:0.85<
・塩分濃度上限:10%

(FDA)

※pH:1~14まであり、pH7が中性、7未満が酸性、7を超えるとアルカリ性となります。
※水分活性:食品の水分は%で表さないで、食品中で微生物が生育するために利用できる水分割合を示す水分活性Aw(Water activity)として表示されます。

黄色ブドウ球菌食中毒の潜伏期間

潜伏期間は0.5~6時間(平均3時間)となります。

黄色ブドウ球菌食中毒の汚染経路

黄色ブドウ球菌は、人や動物の皮膚、鼻粘膜、咽喉などをはじめとして、室内環境中にも広く分布します。

化膿の原因菌でもあることから、手にケガがある人が調理すると、ブドウ球菌食中毒のリスクが非常に高くなります。

食品取り扱い者の手指や器具を介して、黄色ブドウ球菌が食品に付着することが感染経路になることが多いです。

握り飯、いなり寿司、弁当、調理パン等の穀類を原料とした加工食品
乳製品、卵製品、食肉製品、魚肉ねり製品、和洋生菓子等

黄色ブドウ球菌食中毒の発症菌数

食品中で黄色ブドウ球菌が増殖し\(10^5\)CFU/g以上になるとその過程で産生されるエンテロトキシンが発症毒素量に達すると考えられています。
ヒトの発症毒素量はエンテロトキシン1.0μg未満と考えられています。

(FDA.2012)

※CFU/g:CFU(Colony Forming Unit)は菌量の単位で、1g中の菌の個数を表します。

黄色ブドウ球菌食中毒の主な症状

潜伏期間が短く、0.5~6時間後に、悪心、嘔吐、腹痛、下痢の症状がみられます(発熱はあまり見られません)。
通常、これらの症状は24時間以内に改善しますが、摂取した毒素量や感受性により重篤化する場合があり、脱水症状や血圧の低下、脈拍微弱などを伴ったショック又は虚脱がみられる場合は、速やかに医師の診察を受ける必要があります。

黄色ブドウ球菌食中毒の予防

黄色ブドウ球菌の耐熱性は高くないですが、産生されるエンテロトキシンは耐熱性が非常に高く、通常の加熱調理では活性を失いません。
したがって、食品中でエンテロトキシンを産生させないように、黄色ブドウ球菌による食品の汚染や増殖を防ぐことが重要です。

ブドウ球菌食中毒の予防には以下が有効とされます

ブドウ球菌食中毒の予防

  1. 指などに切り傷や化膿巣のある人は、食品に直接触れたり、調理をしたりしない
  2. 手指の洗浄・消毒を十分に行う
  3. 調理中に髪の毛や顔などに触らない
  4. 食品は10℃以下で保存し、菌が増えるのを防ぐ

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(参考文献)

NIID 国立感染症研究所 黄色ブドウ球菌感染症とは
IDSC 国立感染症研究所 感染症情報センター LASR
MAFF 農林水産省 リスクプロファイルシート 黄色ブドウ球菌
FSC 食品安全委員会 ファクトシート ブドウ球菌食中毒 (Staphylococcal foodborne poisoning)
東京都福祉保健局 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
MHLW 厚生労働省
JFHA 公益社団法人日本食品衛生協会
JFIA 一般財団法人食品産業センター 危害要因管理

World Health Organization(WHO)
Food and Drug Administration(FDA-United States)
European Food Safety Authority(EFSA-European Union)
Ministry for Primary Industries(MPI-New Zealand)
Data sheet on foodborne biological hazards(anses-France)
U.S. DEPARTMENT OF AGRICULTURE(USDA-United States)
Centers for Disease Control and Prevention(CDC-United States)
European Centre for Disease Prevention and Control(ECDC-European Union)
National Center for Biotechnology Information(NCBI-U.S. National Library of Medicine)
The International Commission on Microbiological Specifications for Foods (ICMSF-the Commission)
Public Health England(PHE-England)

Lemgo D- and z-value Database for Food(OWL University of Applied Sciences and Arts)
Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food:Draft Guidance for Industry(FDA.2016)
European Food Safety Authority(EFSA Search.Staphylococcus aureus)
Staphylococcus aureus - Microbial pathogen data sheet(MPI.2001)
Data sheet on foodborne biological hazards : "Staphylococcus aureus and staphylococcal enterotoxins"(anses.2011)
USDA Search.Staphylococcus aureus(USDA)
Staph infections can kill (Staphylococcus aureus)(CDC-United States)
The Bacterial Diversity Metadatabase:Staphylococcus aureus 533 R4(BacDive)

 
 

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