リステリア・モノサイトゲネスの死滅条件 リステリア食中毒の原因と予防

リステリア感染症は、ヒトのほか種々の動物にも認められる人畜共通感染症で、健康な大人は重症化することはまれですが、妊婦や高齢者、免疫疾患中の方は重症化する場合があり、致死率が非常に高いので注意が必要です。

今回は、リステリア・モノサイトゲネスの死滅および育成条件とリステリア・モノサイトゲネスによる食中毒について解説いたします。

出典:東京都福祉保健局

リステリア・モノサイトゲネス食中毒の特徴

リステリア・モノサイトゲネスは、一般的な他の食中毒菌と同様に加熱することにより死滅しますが、発育温度域が－0.4～45℃と非常に広く、低温でも増殖します。また、10％程度の高い塩分濃度でも増殖可能です。

一般的に、冷蔵庫で保存したり塩漬けされた食品は食中毒菌が増えないと思われがちですが、このような条件でもリステリア・モノサイトゲネスは増殖し、食中毒の原因となる場合があります。

しかし、健康な大人の場合は、消費期限や保存方法を守っていれば、食中毒を発症することは、まずありませんし、発症しても軽症で自然に治ることが多いです。

但し、リステリア感染症の重篤度には個人差があり、妊婦、胎児、新生児、乳幼児、高齢者および免疫疾患を持つ人は、感染により髄膜炎や敗血症、流産を起こすことがあります。

リステリア・モノサイトゲネスの死滅条件

\(D_{63} = 2.834 min\)（6D:17.0分 , 7D:19.9分）
\(D_{65} = 1.550 min\)（6D:9.3分 , 7D:10.9分）
\(D_{70} = 0.334 min\)（6D:2.0分 , 7D:2.4分）
\(D_{75} = 0.067 min\)（6D:0.4分 , 7D:0.5分）
\(D_{80} = 0.015 min\)（6D:0.09分 , 7D:0.11分）
\(Z = 7.5 ^\circ C\)

(FDA.2011 6D値から逆算)

リステリア・モノサイトゲネスの発育条件

発育条件(FDA)、発育至適条件(農林水産省)

低温でも増殖できるため、冷蔵庫等で低温保蔵中でも菌が増殖する。(農林水産省) 10％食塩加ブイヨン中でも発育可能（食塩耐性）。(農林水産省)

※pH：1～14まであり、pH7が中性、7未満が酸性、7を超えるとアルカリ性となります。
※水分活性：食品の水分は％で表さないで、食品中で微生物が生育するために利用できる水分割合を示す水分活性Aw（Water activity）として表示されます。

リステリア・モノサイトゲネス食中毒の潜伏期間

潜伏期間は24時間～3ヶ月間と広範囲にわたります。

リステリア・モノサイトゲネス食中毒の汚染経路

リステリア・モノサイトゲネスは、低温条件や高食塩濃度下でも増殖が可能など、高い環境抵抗性を有することから、冷蔵庫で低温保存された乳製品、食肉加工品、調理済み食品など、食べる前に加熱しない食品が食中毒の主な原因となります。

リステリア食中毒の主な原因食品例は
fa-warning生ハムなどの食肉加工品
fa-warning未殺菌乳、ナチュラルチーズなど、加熱せずに製造される乳製品
fa-warningスモークサーモンなどの魚介類加工品
fa-warning食事前に加熱せずにそのまま食べる弁当・惣菜など

リステリア・モノサイトゲネス食中毒の発症菌数

健常者においては汚染菌数\(10^4\)CFU/g以下であれば発症リスクは極めて少ないとされていますが、健康状態などにより個人差があり、特に高齢者や妊娠中の女性は極めて少ない菌量でも発症する可能性があります。

※CFU/g：CFU（Colony Forming Unit）は菌量の単位で、1g中の菌の個数を表します。

リステリア・モノサイトゲネス食中毒の主な症状

健康な大人の場合は無症状で経過することが多いですが、妊婦、胎児、新生児、乳幼児、高齢者や免疫系疾患などがある場合には、菌血症や敗血症、髄膜炎になることがあります。

発症した場合は、発熱、頭痛、吐き気など風邪のような初期症状から、最終的に意識障害や痙攣を起こし重篤な状態となり、死亡率も20～30％と非常に高くなります。

リステリア・モノサイトゲネス食中毒の予防

リステリア・モノサイトゲネスは、冷蔵庫内の低温でも増殖しますので過信しないことが重要です。

弁当や惣菜などは再加熱して食べるようにしましょう。
また、妊婦や高齢者など感染リスクの高い人は、未殺菌乳製品やチーズなどを食べないようにしまよう。

リステリア・モノサイトゲネス食中毒の予防には以下が有効とされます

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(参考文献)