腸炎ビブリオの死滅条件 腸炎ビブリオ食中毒の原因と予防
腸炎ビブリオの死滅条件 腸炎ビブリオ食中毒の原因と予防
腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)は、海水中に広く存在します。

汚染された魚介類や調理器具などを介し二次汚染された食品を経口摂取することより、腸管で増殖し感染型の食中毒を引き起こすと考えられています。

腸炎ビブリオによる食中毒の原因食品はほとんどが魚介類で、8月を発生のピークとして、7~9月に多発する細菌性食中毒の主要原因菌の一つです。

今回は、腸炎ビブリオの死滅および育成条件と腸炎ビブリオによる食中毒について解説いたします。

腸炎ビブリオ

出典:国立感染症研究所

腸炎ビブリオ食中毒の特徴

一般名:腸炎ビブリオ
菌種名:Vibrio parahaemolyticus
染色性:グラム陰性
酸素要求性:通性嫌気性
形 状:桿菌
芽胞形成:形成しない

腸炎ビブリオは好塩性細菌で、沿岸の海水中や海泥中に分布し、海水温度が上昇する夏期は特に活発になります。

海水中に腸炎ビブリオが多い時期に獲れた魚介類には、腸炎ビブリオが付着しており、漁獲後や流通過程、不適切な調理などにより増殖し食中毒を引き起こします。

4℃以下の低温で活性は停止しますが、冷凍しても死滅はしません。

増殖速度が極めて速いのが特徴ですが、水道水や熱に弱いため、水道水による洗浄や十分な加熱により死滅させることが可能です。

腸炎ビブリオの死滅条件

3%NaCl-TSB-pH5.0
\(D_{53} = 1.2 min\)(6D:7.2分 , 7D:8.4分)

3%NaCl-TSB-pH6.0
\(D_{53} = 2.0 min\)(6D:12.0分 , 7D:14.0分)

3%NaCl-TSB-pH7.0
\(D_{53} = 3.5 min\)(6D:21.0分 , 7D:24.5分)

生カキ
\(D_{52} = 1.6 min\)(6D:9.6分 , 7D:11.2分)

(財団法人東京顕微鏡院.H16.02)

※D値は、菌株量、pH、脂肪量、水分活性その他の要素で異なります
※D値は生菌数を1/10に減らすために必要な時間です
※Z値は加熱時間D値を1/10 する為に必要な温度です
※6D:6D reduction、7D:7D reduction

腸炎ビブリオの発育条件

発育条件 発育至適条件
温度域 pH域 水分活性 温度域 pH域 水分活性
腸炎ビブリオ 5~43℃ 4.8~11.0 0.94 37℃ 7.8~8.6 0.981

(anses)

腸炎ビブリオの増殖速度は、条件によって異なりますが、極めて速い(至適条件下での世代時間は8~9分や10~13 分という点で、他の食中毒菌とは異なります)。

また、腸炎ビブリオは好塩性であることから1~8%の食塩加培地で増殖しやすく、増殖至適食塩濃度は2~3%です。
食塩が存在しなければ速やかに死滅します。

※pH:1~14まであり、pH7が中性、7未満が酸性、7を超えるとアルカリ性となります。
※水分活性:食品の水分は%で表さないで、食品中で微生物が生育するために利用できる水分割合を示す水分活性Aw(Water activity)として表示されます。

腸炎ビブリオ食中毒の潜伏期間

潜伏期間は6~24時間(平均12時間)となります。

腸炎ビブリオ食中毒の汚染経路

腸炎ビブリオによる食中毒は、病原性菌株に汚染された食品の喫食により腸管に到達した腸炎ビブリオが増殖し、感染型の食中毒を引き起こすと考えられています。

腸炎ビブリオによる食中毒事例のうち、原因食品が判明したもの又は推定されたものは、そのほとんどが生鮮魚介類に関連しています。

発生要因としては、調理器具、手指等からの交差汚染、原材料自体の汚染、長時間の室温放置、放冷不良等による食材保存中の不適切な温度管理、調理時の加熱不良等があり、これらの要因の複数が重なっている場合が多くあります。

水産食品(寿司、刺身、貝類、かに調理・加工品等)
生魚に触った手指やまな板などからの二次汚染

腸炎ビブリオ食中毒の発症菌数

推定発症菌量は\(10^5\)CFU/gとなります。

※CFU/g:CFU(Colony Forming Unit)は菌量の単位で、1g中の菌の個数を表します。

腸炎ビブリオ食中毒の主な症状

潜伏期間は6~24時間で、主症状としては激しい腹痛とともに水様性や粘液性の下痢がみられ、血便がみられることもあります。

下痢は、日に数回から多い時で十数回あり、しばしば発熱(37~38℃)や嘔吐、吐き気がみられます。

下痢などの主症状は一両日中に軽快し回復しますが、基礎疾患を有する者等では、敗血症による低血圧、心電図異常などがみられることもあり、死に至る場合もあります。

腸炎ビブリオ食中毒の予防

室温での増殖速度が非常に速いため、僅かな時間でも冷蔵保存します(低温で増殖は抑制できますが冷凍でも死滅はしません)。
特に水温の高い夏場(6~10月)は、魚介類の低温での取り扱いに注意しましょう。

生存には塩分が必要で熱にも弱いため、水道水での洗浄や加熱調理で死滅させることができます。

腸炎ビブリオ食中毒の予防には以下が有効とされます

腸炎ビブリオ食中毒の予防

  1. 魚介類は、調理前に流水(水道水)で良く洗って菌を洗い流す
  2. 魚介類に使った調理器具類は良く洗浄・消毒して二次汚染を防ぐ
  3. 夏季の魚介類の生食は十分注意し、わずかな時間でも4℃以下で保存する
  4. 加熱調理する場合は中心部まで充分に加熱する

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(参考文献)

NIID 国立感染症研究所 腸炎ビブリオ感染症とは
IDSC 国立感染症研究所 感染症情報センター LASR
MAFF 農林水産省 リスクプロファイルシート 腸炎ビブリオ
FSC 食品安全委員会 生鮮魚介類における腸炎ビブリオ(平成24年1月改訂)
東京都福祉保健局 腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)
MHLW 厚生労働省
JFHA 公益社団法人日本食品衛生協会
JFIA 一般財団法人食品産業センター 危害要因管理

World Health Organization(WHO)
Food and Drug Administration(FDA-United States)
European Food Safety Authority(EFSA-European Union)
Ministry for Primary Industries(MPI-New Zealand)
Data sheet on foodborne biological hazards(anses-France)
U.S. DEPARTMENT OF AGRICULTURE(USDA-United States)
Centers for Disease Control and Prevention(CDC-United States)
European Centre for Disease Prevention and Control(ECDC-European Union)
National Center for Biotechnology Information(NCBI-U.S. National Library of Medicine)
The International Commission on Microbiological Specifications for Foods (ICMSF-the Commission)
Public Health England(PHE-England)

Lemgo D- and z-value Database for Food(OWL University of Applied Sciences and Arts)
Risk assessment of Vibrio parahaemolyticus in seafood(WHO.2011)
Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food:Draft Guidance for Industry(FDA.2016)
Risk Profile: Vibrio parahaemolyticus in bivalve molluscan shellfish(MPI Technical Paper No: 2018/02)
Vibrio parahaemolyticus - Microbial pathogen data sheet(ESR.2001)
Harvesting and handling practices used to mitigate Vibrio parahaemolyticus illness(MPI Technical Paper No: 2018/03)
Data sheet on foodborne biological hazards : "Vibrio parahaemolyticus(anses.2012)
USDA Search.Vibrio parahaemolyticus(USDA)
Centers for Disease Control and Prevention.Vibrio Species Causing Vibriosis(CDC-United States)
The Bacterial Diversity Metadatabase:Vibrio parahaemolyticus 113, EB 101(BacDive)

 
 

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