今回は、乱切り人参の液体凍結試験を実施しましたので、データーと共にご紹介します。液体凍結はエアーブラスト凍結と比較すると凍結スピードが圧倒的に早いため、素材のダメージが最小限および生産効率を向上することが可能です。
乱切り人参の急速液体凍結試験 準備
- 人参を用意し、一辺が20~30mm程度になる様に乱切りにする
- 皮は剥かずにそのままの状態で実施
- 乱切り人参の量は、計300g/袋にて用意
- 1切れで約15g~20g程度
- 乱切りした人参を袋に入れ、 袋の外から穴を開け、 温度センサーを人参の中心部にセット(2本セット)
- 袋に温度センサーを差し込むために開けた穴をコーキング処理し固まるまで一晩冷蔵庫に保存
- 翌日に真空包装を行った後、 凍結試験を実施
上記手順により、センサー差込口のコーキングを固めるため、 被試験用乱切り人参はカットされた状態で翌日まで真空包装されずに冷蔵保存されたものとなります。
人参は鮮度の良いものを選定し、乱切りされた人参2個それぞれの中心部分に温度センサーをセット。冷蔵庫保管で中心温度が約5℃程度だったため、一般的な凍結処理前の温度として想定される10℃に中心温度が上がるまで放置する。中心温度10℃で凍結テストを開始。
乱切り人参の急速液体凍結試験 開始
凍結試験を開始。ブライン液の温度は-30℃設定で実施しています。ブライン液の温度設定については凍結商品の特性により異なりますので、液温の決定には事前にいくつかのパターンでの凍結テストを行う必要があります。温度は低ければ低いほど良いとは一概に言えません。過度な急速凍結をすると素材によっては亀裂が入ったり、逆に素材の風味や食感などを損なう結果となる事も考えられるからです。また、低温仕様にすればするほどコストに大きく影響してきますので、ブライン液の温度設定は慎重に行う必要があります。
急速液体凍結試験の結果
凍結完了後の様子。画像ではわかりにくい部分もありますが、包装された状態では凍結前と比べてあまり変化が見られません。しかし開封していくつか袋から出してみると凍結された状態である事が確認できます。この袋表面に霜が付かないのも液体凍結の特徴といえます。
また、高速凍結することによって氷結時の水分の膨張を最小限に食いとどめることができ、その結果として解凍時のドリップによる旨み成分流出を留めることができ、食感や風味なども凍結前により近い状態を再現する事ができるのです。
常温にて自然解凍後の様子です。細胞破壊が最小限のために、離水もほぼ見られない状態である事が確認できます。原料は安価なタイミングで大量仕入れして急速冷凍保存し、必要な量を解凍すれば即使用が可能という方法がベストではないかと考えます。
乱切り人参の急速液体凍結グラフ
それぞれ、10分20秒と10分25秒で芯温がー18℃に到達。その中でも最大氷結晶生成帯であるー1℃~ー5℃を4分35秒と5分という短時間で通過していることがわかります。
急速液体凍結装置について
高速凍結を行うことで、最大氷結晶生成帯を最短時間で通過させ、素材の細胞破壊を最小限にとどめます。その結果としてエアーブラスト式と比べるて解凍後も素材の味と風味を保つ事が可能です。
液体凍結は凍結にかかる時間が短く、商品全体をムラなく液体が包み込んで急速凍結を行うため、高品質の急速凍結が実現できる凍結方法といえます。