腸管出血性大腸菌の死滅条件 腸管出血性大腸菌食中毒の原因と予防
腸管出血性大腸菌の死滅条件 腸管出血性大腸菌食中毒の原因と予防
腸管出血性大腸菌(Escherichia coli)は、ベロ毒素(Verotoxin=VT, または志賀毒素=Shigatoxin=Stxと呼ばれている)を産生し、腸管出血性大腸菌感染症の原因となる大腸菌です。
汚染された飲食物を介する経口感染がほとんどで、感染力が非常に強いため、ヒトからヒトへの二次感染が多いのも特徴です。
また、溶血性尿毒症症候群などの合併症により死亡あるいは後遺症を残す可能性があります。

今回は、腸管出血性大腸菌の死滅および育成条件と腸管出血性大腸菌による食中毒について解説いたします。

腸管出血性大腸菌

出典:東京都福祉保健局

腸管出血性大腸菌食中毒の特徴

一般名:腸管出血性大腸菌(O157:H7,O26:H11など)
菌種名:Escherichia coli
染色性:グラム陰性
酸素要求性:通性嫌気性
形 状:桿菌
芽胞形成:形成しない

大腸菌は、人や家畜の腸管に存在し、そのほとんどは害がありません。
しかし、いくつかの大腸菌には人に対して下痢などの症状を引き起こす下痢原性大腸菌(病原性大腸菌)というものがあります。

病原性大腸菌は約170種類があり、そのうちベロ毒素(Verotoxin=VT またはShigatoxin=Stxと呼ばれている)を産生し、出血性腸炎や溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome- HUS)を起こすものは、腸管出血性大腸菌と呼ばれています。

代表的なものは血清型O157、O26、O111などで、食中毒の原因および重症化するものの多くはO157になります。

腸管出血性大腸菌の死滅条件

Beef/Pork
\(D_{55} = 33.6 min\)(6D:201.6分 , 7D:235.2分)
\(D_{60} = 6.1 min\)(6D:36.6分 , 7D:42.7分)
\(D_{65} = 1.1 min\)(6D:6.6分 , 7D:7.7分)
\(D_{70} = 0.2 min\)(6D:1.2分 , 7D:1.4分)
\(Z = 6.74 ^\circ C\)

All Meat
\(D_{55} = 36.3 min\)(6D:217.8分 , 7D:254.1分)
\(D_{60} = 6.9 min\)(6D:41.4分 , 7D:48.3分)
\(D_{65} = 1.3 min\)(6D:7.8分 , 7D:9.1分)
\(D_{70} = 0.3 min\)(6D:1.8分 , 7D:2.1分)
\(Z = 6.92 ^\circ C\)

(MPI)

通常の加熱調理条件(中心温度75℃、1分間以上の加熱)で死滅します

※D値は、菌株量、pH、脂肪量、水分活性その他の要素で異なります
※D値は生菌数を1/10に減らすために必要な時間です
※Z値は加熱時間D値を1/10 する為に必要な温度です
※6D:6D reduction、7D:7D reduction

腸管出血性大腸菌の発育条件

発育条件 発育至適条件
温度域 pH域 水分活性 温度域 pH域 水分活性
腸管出血性大腸菌 7~46℃ 4.4~10.0 0.95< 35~40℃ 6~7 0.995

発育条件(FDA)、発育至適条件(農林水産省)

※pH:1~14まであり、pH7が中性、7未満が酸性、7を超えるとアルカリ性となります。
※水分活性:食品の水分は%で表さないで、食品中で微生物が生育するために利用できる水分割合を示す水分活性Aw(Water activity)として表示されます。

腸管出血性大腸菌食中毒の潜伏期間

潜伏期間は3~8日間となります。

(WHO)

腸管出血性大腸菌食中毒の汚染経路

腸管出血性大腸菌O157は、牛などの腸管内に常在しており、これらの糞便に汚染された食肉や、水、野菜、調理器具などから感染するほか、ヒトからヒトへの二次感染も多くみられます。

また、O157は感染力が強く、一般的な細菌性食中毒では100万個単位の菌を摂取しないと感染しないのに対し、わずか100個程度の菌数でも発症するといわれています。

焼き肉、ハンバーグ等の牛挽き肉料理、牛ユッケなど、生や加熱不十分な状態の牛肉(牛肝臓などの内臓を含む)
サラダ、野菜の浅漬けなど、加熱せずに喫食するカット野菜及びカット果物

腸管出血性大腸菌食中毒の発症菌数

推定発症菌量は\(10~10^2\)CFU/g程度と少量で発症します。
※2006年、日本で2~9CFU/人の摂取菌数で食中毒が発生した事例があります

※CFU/g:CFU(Colony Forming Unit)は菌量の単位で、1g中の菌の個数を表します。

腸管出血性大腸菌食中毒の主な症状

無症候性から軽度の下痢、激しい腹痛、頻回の水様便、さらに著しい血便とともに重篤な合併症を起こし死亡に至ることもあります。

多くの場合は、感染後4~8日間の潜伏期間を経て、激しい腹痛をともなう水様下痢を起こし、次に血便が出現します(出血性大腸炎)。

血性下痢(下血)は、次第に血液の割合が増加し最終的にはほとんど血液だけの状態になり、溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome- HUS)、脳症などの重篤な合併症を起こすことがあります。
なお、HUSを発症した場合の致死率は1~5%とされています。

腸管出血性大腸菌食中毒の予防

腸管出血性大腸菌は75℃で1分間加熱すれば死滅します。
食品は十分に加熱し、調理後の食品はなるべく早く食べ切りましょう。
また、二次感染予防として、適切な食品衛生管理や、十分な手洗いを心がけましょう。

腸管出血性大腸菌食中毒の予防には以下が有効とされます

腸管出血性大腸菌食中毒の予防

  1. 生野菜などは十分に洗浄してから使用する
  2. 調理器具は熱湯又は塩素系消毒剤で消毒する
  3. 食肉は中心部までよく加熱する(75℃、1分以上)
  4. 手洗いの徹底等によりヒトからヒトへの二次感染を予防する

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(参考文献)

NIID 国立感染症研究所 腸管出血性大腸菌感染症とは
IDSC 国立感染症研究所 感染症情報センター LASR
MAFF 農林水産省リスクプロファイルシート 腸管出血性大腸菌
FSC 食品安全委員会 食品健康影響評価のためのリスクプロファイル
東京都福祉保健局 腸管出血性大腸菌O157
MHLW 厚生労働省
JFHA 公益社団法人日本食品衛生協会
JFIA 一般財団法人食品産業センター 危害要因管理

World Health Organization(WHO)
Food and Drug Administration(FDA-United States)
European Food Safety Authority(EFSA-European Union)
Ministry for Primary Industries(MPI-New Zealand)
Data sheet on foodborne biological hazards(anses-France)
U.S. DEPARTMENT OF AGRICULTURE(USDA-United States)
Centers for Disease Control and Prevention(CDC-United States)
European Centre for Disease Prevention and Control(ECDC-European Union)
National Center for Biotechnology Information(NCBI-U.S. National Library of Medicine)
The International Commission on Microbiological Specifications for Foods (ICMSF-the Commission)
Public Health England(PHE-England)

Lemgo D- and z-value Database for Food(OWL University of Applied Sciences and Arts)
World Health Organization Fact sheets E.coli(WHO.2018)
Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food:Draft Guidance for Industry(FDA.2016)
European Food Safety Authority(EFSA Search.ESCHERICHIA COLI)
SHIGA TOXIN-PRODUCING ESCHERICHIA COLI(MPI-New Zealand)
Risk profile (update):Shiga toxin-producing escherichia coli in red meat(MPI Technical Paper No: 2015/10)
Risk Profile:Shiga Toxin-Producing Escherichia Coli in Raw Milk(MPI Technical Paper No: 2014/14)
RISK PROFILE:SHIGA-TOXIN PRODUCING ESCHERICHIA COLI IN LEAFY VEGETABLES(NZFS scientific services.2006)(Prepared as part of a New Zealand Food Safety Authority contract for scientific services.2006)
Data sheet on foodborne biological hazards : "Enterohaemorrhagic E. coli" (EHEC)(anses.2011)
USDA Search.ESCHERICHIA COLI(USDA)
Centers for Disease Control and Prevention.E. coli (Escherichia coli)(CDC-United States)
International Journal of Food Microbiology Volume 35, Issue 3, 15 April 1997, Pages 231-237
The Bacterial Diversity Metadatabase:Escherichia coli U5/41(BacDive)

 
 

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