汚染されたカキや二枚貝類を、生あるいは加熱不十分な調理で喫食することにより感染しますが、感染者の糞便や嘔吐物からの二次感染も非常に多く、学校や福祉施設などで発生した場合は、集団発生につながることがありますので注意が必要です。
今回は、ノロウイルスの死滅条件とノロウイルスによる食中毒について解説いたします。
目 次
ノロウイルス食中毒の特徴
ウイルス名:ノーウォークウイルス
分類:Caliciviridae,Norovirus,Norwalk virus
ゲノム:プラス鎖RNA
形 状:小型球形
ノロウイルスはヒトに対して嘔吐、下痢などの急性胃腸炎症状を起こします。
秋口から春先に発症者が増加することから、冬型の胃腸炎、食中毒の原因ウイルスとして知られています。
感染経路は主に経口感染で、感染者の糞便や嘔吐物およびこれらに直接または間接的に汚染された手指や調理器具、汚染されたカキや二枚貝類の生、あるいは加熱不十分な調理での喫食などが感染源としてあげられます。
なた、ノロウイルスの飛沫感染、あるいは狭い空間などでの空気感染によって感染が拡大した事例があります。
また、85℃~90℃で90秒間以上の加熱でウイルスの感染力が失うとされています。
ノロウイルスの死滅条件
ノロウイルスは、乾燥状態、液体の中で長期間安定である可能性があり、水中では60~728日間生存し、凍結に対する耐性があるとされていますが、ヒトに病原性を有するノロウイルスについては培養法が見いだされていないことから、正確な不活化条件は明らかでありません。
形態学的にノロウイルスと類似しているネコカリシウイルス、イヌカリシウイルス、ネズミノロウイルスなど「代替ウイルス」の成績が参考データとして用いられています。
食品健康影響評価のためのリスクプロファイル ~ノロウイルス~(食品安全委員会.2018)fa-external-link別添資料 3. ノロウイルス及び/又は代替ウイルスに対する加熱処理効果fa-external-link また、ノロウイルスの死滅条件としては、コーデックス委員会が定めた「食品中のウイルスの制御のための食品衛生一般原則の適用に関するガイドライン CAC/GL 79-2012」において、ノロウイルスの不活化条件を 85~90℃で90秒間以上と定めたことを受け、厚生労働省が作成した「大量調理施設衛生管理マニュアル」のガイドラインにおいても同条件に定められています。 食品中のウイルスの制御のための食品衛生一般原則の適用に関するガイドライン CAC/GL 79-2012(CODEX.2012)fa-external-link
大量調理施設衛生管理マニュアル(厚生労働省.H29)fa-external-link
ノロウイルス食中毒の潜伏期間
潜伏期間は24~48時間となります。
ノロウイルス食中毒の汚染経路
現在知られているノロウイルスの唯一の保有体はヒトのみです。
ノロウイルスは二枚貝が本来保有しているものではなく、二枚貝の体内で増殖することもありません。
ノロウイルス胃腸炎患者から食中毒の原因となった食品の原料食材までの汚染経路が実証されているのはカキを含む二枚貝のみであり、 その汚染は人の便などの中に存在するウイルスが下水・河川等を通じて海水中に混入することが原因となっています。
原因食品は、水やノロウイルスに汚染された食品、特にカキを含む二枚貝が多く報告されています。
また、感染者の便や吐しゃ物に接触したりすることにより二次感染を起こすことがあります。
fa-warning濾過性摂食を行う二枚貝
fa-warningその他の食品(生産・取扱い・調理の間に汚染される食品群:野菜、果物、ジュース、デリミート、サンドイッチ、ロールパン、ミックスサラダ、ベーカリー製品及びアイスなど)
ノロウイルス食中毒の発症ウイルス数
推定発症ウイルス量は\(10~10^2\)CFU/gとなり少量でも発症します。
※CFU/g:CFU(Colony Forming Unit)は菌量の単位で、1g中の菌の個数を表します。
ノロウイルス食中毒の主な症状
潜伏期は一般に24~48時間で、主な症状は、嘔吐、下痢、腹痛が見られ、発熱(38℃程度)を伴うこともあります。
また、嘔吐や下痢が激しい傾向があり、乳幼児や高齢者などは重症化する場合もあります。
発症後は1~3日程度で治癒しますが、数週間はウイルスに汚染された便を排出しますので回復後も感染源にならないように注意が必要です。
ノロウイルス食中毒の予防
カキなどの二枚貝は中心部まで十分に加熱しましょう。
ノロウイルスを死滅させるには、中心温度85~90℃で90秒以上の加熱が必要です(通常の加熱調理条件である中心温度75℃で1分以上では死滅しません)。
また、感染力が強く、感染者の嘔吐物や便から二次汚染される可能性が多いので注意が必要です。
ノロウイルス食中毒の予防には以下が有効とされます
ノロウイルス食中毒の予防
- 下痢、吐き気、腹痛、発熱などの症状があるときは調理に携わらない
- 二枚貝は中心部まで十分に加熱(85~90℃で90秒以上)すること
- トイレの後や調理をする際には手洗いをしっかり行うこと
- 嘔吐物の処理に十分注意すること
topics
連続式ボイルクール/殺菌洗浄
「ボイル+冷却」「洗浄+殺菌」「加熱+殺菌+すすぎ」等を連続処理する安全で効率の良い装置があります。
加熱温度・時間、冷却温度・時間、殺菌時間、洗浄時間など希望通りの仕様にて格安で製作可能です。
根菜、果実、農産物などの加熱冷却の他、調理加工品、ゼリー等の調理及び加熱殺菌に最適。また、「セリウスソフト水生成装置」を利用した連続式殺菌洗浄装置としても実績があります。
(参考文献)
NIID 国立感染症研究所 ノロウイルス感染症とはIDSC 国立感染症研究所 感染症情報センター LASR
MAFF 農林水産省 リスクプロファイルシート ノロウイルス
FSC 食品安全委員会 食品健康影響評価のためのリスクプロファイル ノロウイルス
東京都福祉保健局 ノロウイルス
MHLW 厚生労働省
JFHA 公益社団法人日本食品衛生協会
JFIA 一般財団法人食品産業センター 危害要因管理
World Health Organization(WHO)
Food and Drug Administration(FDA-United States)
European Food Safety Authority(EFSA-European Union)
Ministry for Primary Industries(MPI-New Zealand)
Data sheet on foodborne biological hazards(anses-France)
U.S. DEPARTMENT OF AGRICULTURE(USDA-United States)
Centers for Disease Control and Prevention(CDC-United States)
European Centre for Disease Prevention and Control(ECDC-European Union)
National Center for Biotechnology Information(NCBI-U.S. National Library of Medicine)
The International Commission on Microbiological Specifications for Foods (ICMSF-the Commission)
Public Health England(PHE-England)
Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food:Draft Guidance for Industry(FDA.2016)
European Food Safety Authority(EFSA Search.Norovirus)
Scientific Opinion on Norovirus (NoV) in oysters: methods, limits and control options(EFSA Journal 2012;10(1):2500)
Norovirus | NZ Food Safety | NZ Government(MPI-New Zealand)
Risk Profile: Norovirus in mollusca(NZFS-ESR.2009)
Ministry of Health fact sheet on norovirus(NZFS-ESR.2010)
Data sheet on foodborne biological hazards :Norovirus(anses.2011)
USDA Search.Norovirus(USDA)
Centers for Disease Control and Prevention.Norovirus(CDC-United States)
Norwalk-like viruses: Public health consequences and outbreak management(CDC.2001/50(RR09);1-18)