金属検出機の原理と食品工場での基本的な使用方法
金属検出機の原理と食品工場での基本的な使用方法

金属検出機は、ほぼすべての食品工場で使用されているメジャーな装置ですが、使い方を間違えてしまうと性能が十分に発揮されずにトラブルが発生することがあります。

今回は、金属検出機の原理と適切な使用方法について解説いたします。

金属検出機の原理

金属検出機は、大別すると、発信コイルを中央に挟んだ形で前後に受信コイルがある「同軸型」と、上部に発信コイルがあり下部に二つの受信コイルがある「対向型」、主にアルミ包装品に使用する「永久磁石型」があります。
ここでは、一般に広く使用されている「同軸型」について説明を進めさせていただきます。

異物が混入していない場合

異物が混入していない場合
同軸型ヘッドを使用している金属検出機は、1個の発信コイルと2個の受信コイルにより構成されています。
異物が混入されていない製品が通過した場合は、受信コイルAと受信コイルBのバランスは平衡状態(A=B)になっています。

鉄(磁性体)が混入している場合

鉄(磁性体)が混入している場合
鉄(磁性体)が混入している場合は、混入している鉄が磁化されることにより磁力線が鉄側に引き寄せられ、受信コイルAの磁束は受信コイルBより強く(A>B)なります。
これにより差動構成の受信コイルAと受信コイルBのバランスが崩れ、金属が混入していることを検知することができます。

ステンレス(非磁性体)が混入している場合

ステンレス(非磁性体)が混入している場合
磁性を持っていないステンレス(非磁性体)が混入している場合は、ステンレスが磁界を通過することにより渦電流が発生し、さらに金属近傍に磁界が発生します。
この磁束が弱まることにより、差動構成の受信コイルBが受信コイルAより磁束が強くなりバランスが崩れ非磁性体を検知することができます。

金属検出機の検出感度について

金属検出機の検出感度特性は、磁性体と非磁性体により異なり、磁性体の場合は体積に比例し微粉末でも塊状に近い感度が得られ、発信周波数に影響されません。それに対し非磁性体の場合、金属の固有抵抗に反比例し微粉末は最大粒子のみの感度となり、発信周波数の二乗に比例した感度となります。

非磁性体の保有抵抗値(検出感度)
銀>銅>金>アルミ>黄銅>亜鉛>すず>鉛>ステンレス

被検査品の流れる向きと感度

ベルト上を流れる検査品の向きによって検出感度が異なります。
ベルト面進行方向に対し横長の場合は検査品内容物によるノイズが大きくなり感度が低下します。斜め方向はノイズの影響が少ないく感度が高くなりますが、運用上、斜め方向に流すことは難しいことから、縦長方向に流すことで横長方向よりも高い感度を得ることができます。
検査品の流れる向きと感度

被検査品の通過位置と感度

金属検出機は、検出ヘッドの通過位置によって検出感度が異なります。
同軸型の場合は、A,C,G,Iが最も感度が高く、次いでB,D,F,H、中央部のEが最も感度が低い位置になります。
しかがって、検出感度の確認を行う際は、感度の低い中央部をテストピースが通過するようにすることが重要です。
検査品の通過位置と感度

被検査品の形状と感度

検査品に混入している金属の形状や方向により検出感度が異なります。
金属異物が針金状の場合、鉄では進行方向に向いていると感度が高くなり、ステンレスはどのような状態でもあまり変わりません。
一方、円盤状の場合、鉄では横に平たくなっている状態、ステンレスでは横広で縦に立っている状態で感度が高くなります。
検査品の形状と感度

被検査品によるその他の影響

包装形態
被検査品が大きいほど流れる渦電流が大きくなり感度低下の影響が大きくなります。また、被検査品が小さい場合でも被検査品同士が接触していると影響が大きくなってしまします。

水分量と塩分量
被検査品の水分量と塩分量は少ないほど渦電流が流れにくく、影響が小さくなるため検出感度が高くなります。

温度
被検査品の温度が低いほど渦電流が流れにくく、影響が小さくなるため検出感度が高くなります。

金属検出機の基本的な使用方法

テストピースによる検出感度チェックと基本的な使用方法のポイントは以下になります。

テストピースによる検出感度チェック
  • チェック頻度はCCPの管理基準に基づき適切な頻度で行う。
  • 生産時と同じ品温の被検査品を使用する。
  • 生産時と同じ方向に被検査品を搬送する。
  • 生産品と同じ被検査品の上にテストピースを載せ、検出感度の最も低い間口中央部を通過するようにする。
  • 被検査品が冷凍品の場合は、温度上昇に伴う影響が増加するため、短時間常温放置した被検査品を使用する。
  • 被検査品の大きさが不均一な場合は、一番大きな被検査品を使用する。
基本的な使用方法
  • 検出部の安定に30分程度要するので、検査開始の30分前にはONにする。
  • 他の機械と同じ電源を共用するとノイズの影響を受ける可能性があるので単独電源を使用する。
  • 電源ケーブルをコイル状に巻いて束ねると磁界によりノイズが発生するので注意する。
  • 搬送ベルトの駆動が悪くなるとノイズを発生するのでベルトやテンションローラーは常に清掃する。
  • 搬送ベルトが蛇行しているとガイドと擦れてノイズを発生するので始業時に調整を行う。
  • 搬送ベルトが他のコンベアーと接触しているとノイズを発生するので接触がないか確認する。
  • 大型モーターを使用する機器の近くはノイズの影響を受けるので設置しない。
  • 被検査品の大きさに合った間口の金属検出機を使用する。

異物が混入した商品の取扱いについて

金属検出機が正常に動作して商品を振り分けているにも関わらず金属異物の混入クレームが発生するケースがあります。一例として金属検出機で排除した商品にもかかわらず正常商品にまぎれ込んでしまうためで、管理が適切に行われていない場合に発生します。
排除した商品は自由に取り出しが出来ない専用のボックスなどに保管していくのが好ましいです。
専用ボックスに保管した後、すみやかに混入原因を特定して記録する様にしましょう。

まとめ

一旦,異物混入事故を起こしてしまうと会社のイメージダウンだけでは留まらず、場合によっては会社存亡の危機に直面することもあり、その影響や損失は計り知れません。

金属異物混入防止の対策としては「異物混入防止の3原則」である、①入れない、②持ちこまない、③取り除く、を念頭に入れながら、金属検出機は最後の砦としてCCPに設定されるなど、重要な位置付けとなっています。

金属検出機の基本的な原理や使い方を理解していただき効果的に使用していただければと思います。

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